天生峠
絶壁走行が楽しい急峻な国道峠
読み方 | あもうとうげ | |
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標高 | 1290m | |
位置 | 岐阜県大野郡白川村・飛騨市 | |
道路 | 国道360号線 | |
水系 | 庄川・神通川 | |
実走日 | 1994年9月12日(月) | |
地図など | Google Maps・地図院地図 |
天生峠は、合掌集落のある白川村と高山本線の通る河合村(現在は飛騨市)を結ぶ、まさに隘路と呼ぶにふさわしい峠道である。地図上の道筋が既にいかれているので、相当急峻なのだろうと見当はつくが、実際に行ってみると想像以上のものだった。
この道路は非常に急峻な道のため通行止が多い。現におれが行ったときには復旧工事をしていたし、その少し前は通行止だったと地元の人に聞いた。
おれは合掌集落の白川村荻町から上りはじめた。ここの標高が490mほどなので、800mアップである。峠への入口は村落道のように貧相で、見落としそうになった。
入口からがんがん上りはじめる。少し行くと見上げるような山の中腹にコンクリートの被覆と白いガードレールが見えた。あれにこれから上るのか……? とんでもないな、これは。思ったが、まあ行くしかない。
道は1.5車線の舗装。アスファルトは新しい部分もあれば荒れた部分もある。狭いが狭いなりに車が通る。大型車も通っていく。抜いていったタンク車がしばらく後に遥か上方の山の中腹を巻いていくのが見え、ある意味感心する。
中滝という滝を間近に見て折り返すと本格的なワインディングになる。斜面をひたすら上り、左手がどんどん深い谷になる。展望が開け、ぐにゃぐにゃの道が眼下に見えてくる。さっき下から見た部分である。
ぐにゃぐにゃの道の眺めが左後方に去ると、左に繊砂谷の水音が近づき、それまでの絶え間ない急坂が嘘のようにペダルが軽くなった。左側の小さな湿原に咲く可憐な花を眺めつつ、軽快に頂上に到着。
頂上には峠の標柱があり、泉鏡花作 高野聖由縁の地 天生峠岐阜県指定 天然記念物 天生の高層湿原植物群落などと書いてある。
このときには高野聖を読んだことはなかったのだが、あとで読んでみた。これは明治時代の天生峠の付近を舞台とする短編で、高野聖が蛇やらヒルやらに襲い掛かかられて死を覚悟しながら天生峠の峠道を歩くという、身の毛もよだつような描写がある。先に読んでいたらこの峠を越えようとは思わなかったかもしれない。
他には駐車場やトイレがあるほか、遊歩道や展望台もあったが、展望台から展望はなかった。展望台へはそれなりに歩いたのだが。
地図を見ると白川側だけがぐにゃぐにゃしているので、下りは緩やかなのかと思ったが、それは大甘というものだった。いきなりものすごい勾配で下りはじめ、片時もブレーキレバーの力を抜けない。この日は何とか晴れていたが、もしも雨だったら下るのはかなり難しかろう。
そのすごい下りは天生の集落で終わり、標高は600mを切る。この天生という集落はヘアピンの急坂に立地していて驚く。右手には下小鳥ダムがちらと見えた。
高山本線の角川駅まで下ると、標高は450mを切る。
2002年1月7日初版 / 2012年11月29日更新