書籍紹介

旅と峠と自転車に関係ありそうな書籍の簡単な紹介を書いてみました。現在12あります。並んでいる順番は、大雑把に言って、マストアイテム→コレクターズアイテムです。

改訂普及版 定本・信州百峠

ISBN4-87663-295-2 / 1997年8月7日発行(第2刷) / 2000円(税別)

監修: 井出孫六・市川健夫 / 発行所: 株式会社郷土出版社

収録されている峠の一覧 / 一覧のGoogle Maps


1995年に出た本であるが、改訂普及版ということだから、オリジナルはもっと前に出たのだろう。それがいつかはこの本自体には書いていない。長野オリンピック(1998年)の話題が載っているからそれほど昔でもないと思われる。

この本には、31人の地元の執筆陣が書いた、長野県の峠の案内文が集められている。書名通り項目は100あるのだが、実際に取り上げられている峠は140もある。これはひとつの項目で複数の峠を扱っているものが多いからだが、なかなか大判振る舞いだ。

各項目は1ないし3ページ程度からなっている。2段組であるが文章は下半分にしかなく、上半分には大きめの写真や地図(尾根筋と道筋を描いた簡素なもの)が載せられている。写真が多いわりには文章の密度は濃い印象がある。

文章は紀行文ではなく案内文であり、峠の歴史と現状が手際よく記述されている。それらの記述は簡潔ではあるが、峠の細部がよく書かれており、観光客の感想のようなものとは懸絶したレベルになっている。例えば以下の記述は信州峠についてのものだが、これは地元の人でなければ書けないのではないか。

この峠を越えるには、周りの山や谷がむせかえるような若葉、青葉で包まれる五月中旬がよい。休んでいるとウグイス、山鳩、カッコウ、筒鳥の鳴き声が聞こえてくる。先を急がず行くなら自然を満喫できる。秋もよい。秋深い山々は薄紫の光の中でセピア色に静まりかえる。主婦の大根漬けの準備もみかける。日本の古い良さが、まだ残っている感じである。

これらの文章には余計なことがほとんど書かれていないのもいいところで、例えば観光案内や愚痴や与太話の類はなく、本全体の印象を高貴(上品というのとはちょっと違うよな)なものにしている。また、執筆者が多いわりには不思議に文章に統一感があるのも特徴だ。

ただ、標高の情報にはいくつか問題がある。長峰峠の標高が1503mだったり、岩魚越峠の標高が1200mだったりするが、これらは誤りとしか思えない。

巻末には「信州の峠総覧」が掲載されている。高い網羅性を持ち(「峠」という名前の集落まで載っている)、地図から引くこともできて使いやすい。

なお巻頭にはカラー口絵があり、24ページにわたって峠の写真が載っている。21世紀の目からすると取り立てて「くっきりはっきり色鮮やか」とは言えないものだが、わざとらしさがないところが本文と合っていていいとも言える。一方で本文中の写真には相当古いと思われるものがある。例えば長峰峠の写真はダートだが、いったいいつの写真なのだ。

表紙の写真は権兵衛峠、裏表紙の写真は木曽の地蔵峠である。

全体としては、長野県の峠に峠として(つまり、観光スポットとしてではなく)興味があればおすすめしたいと言える良書だと思う。

峠への挽歌 信州の峠をたずねて

ISBN4-7952-8642-6 / 1999年4月24日発行 / 1500円(税別)

著者: 滝沢忠義 / 発行所: ほおずき書籍株式会社

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この本は、23の信州の峠の紀行文集である。著者の滝沢忠義氏は信州百峠日本百名峠でも執筆陣の中に名を連ねている(姓は前者では「滝澤」、後者では「高森」)。読み比べてみるのも一興かもしれない。筆者はこの本を1993年から1995年までの記録に基づいて書いたということだから、両者よりは新しい内容を持っていることになるだろう。

各々の紀行文は、1段組の8ページ程度からなっている。モノクロながら写真が多く、これがかなりの効果を生んでいる。地図は一部の例外を除いてない。

文章は、故事の説明や関係する文芸作品の紹介をまじえたりしながらも、実際に峠を訪れたときに見たもの、会った人々、感じた印象を、特に飾ることなく、声高に賛美することも批判することもなく淡々とつづっている。それぞれには全然派手さはないものの、その峠に漂う空気感のようなものがうまく描かれている。例えば次の大洞峠に関する一節はどうだろうか。

アルプス展望広場で、私もゆっくり木のベンチに腰をおろして一服した。山へ登ったときのさまざまな思い出が去来する。(中略)そして眼前にある針ノ木岳、蓮華岳、爺ヶ岳、白馬岳。若かった頃の山旅が懐かしく思いだされた。閑雅な時間が過ぎていた。ともあれ、大洞峠には、過去への眺望も用意されていた。

私的な経験に基づく印象をやや朴訥に語っているだけなのだが、峠道の明るく静かな空気や、遠すぎず近すぎずたたずんでいる北アルプスの白い峰の眺めが、とても濃く描き出されていると思うがどうか。

他には、特に田口峠や木曽の地蔵峠の文章が心に残る。中には紀行文としてよいとは言えないものがあるのは認めるが(例えば神坂峠とか。故事の紹介が大部分)、全体として、失われていく風景と時間を、センチになることなく描き切った、いい紀行文集なのではないか。

峠で訪ねる信州

ISBN4-7840-7023-0 / 2006年5月27日発行(初版) / 1500円(税別)

文: 川崎史郎 / 写真: 小林敬一 / 発行所: 信濃毎日新聞社

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これは、信州の55の峠の気軽なガイドブックである。オールカラーであり、厚手の紙でできているので、大きさのわりにはずしりと重たい。

それにしても、この「峠で訪ねる信州」という書名は何なのだろうか。訪れたいのは信州であって、峠はそのための実装手段である。……と、そう言いたいのか。まあそれでもいいが。本の名前は編集者によって適当につけられてしまうこともあるということだし。

さて本文であるが、各峠には2ないし6ページが割り当てられている。とても写真が多く、わかりやすい地図もついている。文章はそれらの隙間を埋めるように配置されていて、あまり読みやすくはない。

文はくせのないもので、読者を選ぶことはないだろう。地の文(峠の紹介文)と「コースガイド」に分かれているのだが、前者についてはない峠が多い。後者は全部の峠について書かれているが、中にはコースのガイドでも何でもないものもある。例えば分杭峠のコースガイドには例のゼロ磁場の話が嬉々として書いてある(それにしても、最近では、体によい影響を与える「気」を発生させる「ゼロ磁場」ができていることが判明したと書いてあるのだが、誰かがプロトン磁力計を持っていって測りでもしたのか)。

あと、信州百峠によく似た文面が載っているのは気になる。内山峠、権兵衛峠、小路峠あたりにそれが見られる。そっくり同じ文面ではないが、信州百峠の愛読者であれば一発でわかるレベルだ。

載っている写真は上記の通りオールカラーであり、美しいものが多く、数自体もかなり多く(例えば権兵衛峠には9枚ある)、おそらく他の本では決して見ることのできない題材をカバーしているとも思うのだが(例えば紅葉の塩尻峠を上るタンクローリーの写真はとてもいいと思う)、散漫な印象があり、信州百峠峠への挽歌で写真が大きな効果を生んでいたのと比べると、あまり効果的には感じない。何が悪いのかよくわからないが、配置があまりよくないとか、枚数が多すぎるとか、写真自体がアーティスティックすぎるとかいうあたりが問題だろうか。

ちなみに、写真には美しいものが多いと書いたが、美しい写真があるべきところすべてにあるわけではない。例えば平沢峠の眺望は本来素晴らしいはずだが、この本ではあまり美しい写真は載っていない。

この本で最もよろしくないのは、峠道沿いでも何でもない近所の観光スポットの紹介がそれなりの割合を占めていることだ。例えば善知鳥峠の項ではみどり湖が紹介されているわけだが、みどり湖は場所が近いだけで峠とはほとんど関係がない。こういうのが随所にあるせいで、峠の興趣が薄められる結果になっている。

いろいろ書いたが、価格はお手頃であるし、写真の質は高いと思うので、長野県の峠に興味があればやはりおすすめはしておきたい。

秩父の峠

ISBN4-87891-038-0 / 1988年4月30日発行 / 1500円(税別)

著者: 大久根茂 / 発行所: さきたま出版会

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この本は、秩父郡(東秩父村)出身で民俗学の研究に携わる著者による、秩父の峠の紀行文集である。しかしその主眼は歩いたことの記録にはない。はじめにで著者本人がこう書いている。

この本は、峠歩きのガイドブックではありません。所要時間も書いてなければ、途中途中の細かい状況もほとんど無視しています。旧道を求めて道なき道を歩いたこともありますから、場所によってはお勧めできない峠もあるわけです。また、峠道に沿って存在する文化財や施設の案内書でもないことは、読んでいただければわかると思います。

私自身の一番の興味は、峠を歩くことそのものはもちろんですが、それ以上に、峠と人とのかかわり合いについてでした。峠は障壁ではない――ということでした。

そういったわけで、この本の文章は、峠(の旧道)を歩いたという流れに沿いながらも、随所で往年の峠を知る地元の老人の証言と、峠に関する故事を紹介をちりばめるという、ある意味散らかったものになっている。しかし読んでいてあまり違和感はない。文体にも特段くせはない。

一方で、峠の現況に関する嘆きがやや多い。そこには、失われつつあるかつての峠が正しくて、それから離れつつある現在の峠は間違い、というようなニュアンスがあって、読んでいてやや気に障るところがある。おれがそう言う理由はふたつあって

である。

もっともこれは、峠への挽歌の諦観した筆致や九州の峠の明るい書き方と比べて、という話ではあるだろう。別にこの本のトーンが攻撃的だとかいうことはない。少なくとも日本百名峠での一部の峠の記述よりははるかにましだ。

それはともかく、この本の著者の、少し昔(明治時代とか)の峠の姿を追い求める姿勢は一貫しており、それは素晴らしいと思う。当時の峠道、つまり旧道を歩き、路傍の道標に目をやり、故事を調べ、地元の古老にヒアリングをする。民俗学のバックグラウンドの上にそういった努力を結集して書かれたのがこの本なのであり、うわべだけで書かれた部分の多い日本百名峠などと比べれば月とシーモンキーくらいの違いがある。そして読んでいてそれはこう刺さってくるわけだ。おれのこれまでの峠への接し方はどれだけ浅薄だったのだ、と。

また、著者本人は歩いた当時の峠の姿を濃く描写するつもりはなかったのだろうが(上記のように著者の主眼は過去にあるのだから)、出版後時間の経った現在の目からはその姿がある程度感じられる。当時は滝沢ダムも浦山ダムもなく、雁坂トンネルもなかった。そんな時代の証言として読むのも、邪道だろうがありだろう。

さてここからは体裁について。口絵のようなものはない。はじめにはあるがあとがきはない。またはじめにのあとには秩父と峠という総論が掲載されている。全峠を網羅する見開きのイラスト風の地図もあり、全体像の把握には役に立つ。

文章は2段組で、各峠には尾根筋と道をかなり詳しく書いた地図が載っている。この地図は北が上とは限らないので土地勘がないとやや混乱するが、全体としてはかなりわかりやすいものだ。モノクロの写真がそこそこ多く掲載されており、これはとても効果的である。

峠は秩父の西から反時計回りに収録されている。峠の数があまり多くないだけあって、それぞれの峠の説明はとても濃く、長いものは18ページもある。短いものでも12ページある。

ちなみに上で引用した文はですます調だが、これははじめにだけで、本文はだである調だ。また、面白いところでは、著者が実際に歩いた向きとは無関係に、文章は秩父から外へ向かう向きに歩いたかのように調整して書いてある。

結論としては、自転車で秩父の峠を走るのに役に立つかどうかといえば、それは明らかに否であるが、少しでも秩父の峠の背景に興味が湧いたならば、この本は買いだと思う。ちなみに続編として峠 秩父への道がある。

峠 秩父への道

ISBN4-87891-059-3 / 1995年4月30日発行 / 1650円(税別)

著者: 大久根茂 / 発行所: さきたま出版会

収録されている峠の一覧 / 一覧のGoogle Maps


この本は、題名こそそうなっていないが、秩父の峠の続編である。ところどころで秩父の峠前著として言及されている。体裁や文章の雰囲気は秩父の峠と共通である。

大部分のネタは秩父の峠より新しく、最初から大量のネタを2分割して出したわけではないことは確かである。例えば、小鹿坂峠の章では1994年に開通したばかりの秩父公園橋が取り上げられている。一方で、鳥首峠の章は1986年の取材に基づいているので、全部が新しいわけでもない。

秩父の峠と異なるところを書いておくと、まずカラーの口絵がある。秩父の峠収録の峠の写真も載っているのがちょっと面白い。はじめにがあるが、秩父の峠と異なりあとがきもある。またあとがきの手前には峠の役割という書下ろしではないコラムが載っている。

まあ、読むならばこれと秩父の峠はセットで入手して読むべきだろう。

九州の峠

ISBN4-7512-0650-8 / 1996年9月25日発行 / 2330円(税別)

著者: 甲斐素純・前山光則・溝辺浩司・桃坂豊 / 発行所: 葦書房有限会社

収録されている峠の一覧 / 一覧のGoogle Maps


この本は、九州生まれ・九州在住の4人の執筆陣による九州の70の峠の紀行文集である(三太郎峠を3つに分解して数えれば72になるが、帯には70と書いてある)。項目数は61しかないのに峠の数が70なので、1つの項目で複数の峠を扱っているものがあるわけだ。項目数は100だが峠の数は140もあった信州百峠のような大盤振る舞いではない。

各項目は3ないし8ページからなる。文章は2段組で、写真と地図は基本的には上段に集められており、読みやすい。写真はモノクロで、どの項目にも最低1枚はある。地図は地形図や地勢図に細かい書き込みを加えた詳細なもので、かなり使えそうだ。

文章の体裁は紀行文である。全体として、あっけらかんとした、どこか明るい描写が爽やかだ。日本百名峠のように、遠くから来た都市生活者が高みから手を伸ばしてちょっと峠に触れてみた、という感じのものではない(日本百名峠も全部がそうだというわけではないが)。

単に自分が峠に行ってみたというだけではなく、その土地の古老を訪ねたり、地元の人々に峠をどう思っているかを尋ねたりした結果が多く載っており、これは貴重な記録だろう。故事や文献の紹介も多数あるが、誰でも知っているようなものではなく、中には熊本県立人吉高校の文芸部誌の紹介などというものもある。そしてそれぞれがとても大きな役割を果たしている。今はもういない峠の茶屋の名物じいさん(奄美の三太郎峠と鹿児島の久七峠)、清水の正しい飲み方(不土野峠)、行きには素面で帰りにはへべれけで峠を越える集団(温迫峠)、……などなど。

その中で唯一、犬鳴峠の項だけは本当によくない。峠の麓の故事しか書いておらず、峠自体については何も触れられていない。

なお、載っている峠の中には一般的な峠の定義には当てはまらないものがやや多いように思う(例えば鯨見の丘は峠ではないだろう)。また峠の名前もかなり国土地理院の地形図と異なるものがあってマイ・ウェイを行っている感があるが、これについては峠名についての異説ということで評価したい。

収録されている峠に興味があるとか、越えたいとか、越えてみたが由来が知りたいとかいう方は、ぜひ入手して読まれるのがいいと思う。

北海道の地名

ISBN4-89363-321-X / 1994年6月25日発行(第5刷) / 3000円(税別)

著者: 山田秀三 / 発行所: 北海道新聞社


これは、北海道全域の地名について、その由来を載せている本である。もちろん載っていない地名もあるが、カバレッジはかなりの率であると言っていいだろう。

章立ては地方別になっており(かつての国による区分)、ところどころに手書きの地図が載っている。巻末の索引は充実しているので、地名から引くにはこちらを使うことができる。なお、日本が放棄した箇所も含む千島列島についても、概略ながら記述がある。

どんな調子の記述であるかを示すために、風烈布(ふうれっぷ。西尾峠の北側の水系であるフーレップ川の河口付近の地名)についての記述を引用してみる。

枝幸町内の川名、地名。風烈布川は乙忠部から南西5キロの処を流れている川。永田地名解は「フーレㇷ゚ 赤き処」と書いた。フーレㇷ゚(hure-p 赤い・もの)はよく苺や「こけもも」を呼ぶ言葉であるが、ここでは「赤い・川」の意だったのかもしれない。川尻しか見ていないが、何となく水の赤い川だった。やち水が流れてでもいて赤いのであったろうか。

アイヌ語地名にはいろいろな説があり、それらについての基礎知識を欠いているおれにはこの本の記述がどの程度妥当なのかを判断することはまったくできないけれども、上記のように、この本では先行研究や実地踏査の結果も多く取り上げており、手前勝手な自説の開陳に陥ってはいないことは明記しておきたい。

訪ねてみたい美しき信州 5 安曇野・白馬山麓

ISBN4-7840-9923-9 / 2002年6月17日発行(第1刷) / 1700円(税別)

写真: 佐々木信一 / 文: 川崎史郎 / 発行所: 信濃毎日新聞社


写真集。はっきり言って、信州の写真集などというものは長野県の書店の郷土の本コーナーに行けば迷うほどたくさん置いてあるのだが、その中でこの本が特徴的なのは、山で撮った山の写真ではなく、麓で撮った山の写真がメインであること。登山愛好家ではないただのチャリダーであるおれにはこの視点がとても嬉しい。

そして、山を見上げるだけでなく、里山の花にも集落にもレンズが向けられている。写真は極めて美しいので、この視点に感度のある人にはお勧め。

最新地形図入門

ISBN4-635-20002-7 / 1992年5月1日発行(初版第2刷) / 1893円(税別)

著者: 五百沢智也 / 発行所: 株式会社山と渓谷社


国土地理院発行の2万5千分の1地形図の作られ方や読図の方法を説明した本。ハウツー本ではなくちょっと学問的なかほりも漂うところが特色。かつて実際に地形図を書いていた著者ならではの地図への愛も感じられる。

2万5千分の1地形図の図式はこの当時から変更されてしまい、この本の内容も現在では部分的にすっかり古くなってしまったのだが、改訂はされているのだろうか。改訂されているならばおすすめの本である。

日本鉄道名所シリーズ

日本鉄道名所 1 函館線 根室線 宗谷線: ISBN4-09-395201-9 / 1987年2月10日発行(第1版第2刷) / 1500円(税別)

日本鉄道名所 2 東北線 奥羽線 羽越線: ISBN4-09-395202-7 / 1986年12月10日発行(第1版第2刷) / 1500円(税別)

日本鉄道名所 3 首都圏各線: ISBN4-09-395203-5 / 1987年4月10日発行(第1版第2刷) / 1500円(税別)

日本鉄道名所 4 東海道線: ISBN4-09-395204-3 / 1986年8月1日発行(第1版第2刷) / 1500円(税別)

日本鉄道名所 5 中央線 上越線 信越線: ISBN4-09-395205-1 / 1986年10月10日発行(第1版第2刷) / 1500円(税別)

日本鉄道名所 6 北陸線 関西線 紀勢線: ISBN4-09-395206-X / 1987年3月10日発行(第1版第2刷) / 1500円(税別)

日本鉄道名所 7 山陰線 山陽線 予讃線: ISBN4-09-395207-8 / 1986年11月10日発行(第1版第2刷) / 1500円(税別)

日本鉄道名所 8 鹿児島線 長崎線 日豊線: ISBN4-09-395208-6 / 1987年1月10日発行(第1版第2刷) / 1500円(税別)

編集委員: 宮脇俊三・原田勝正 / 発行所: 株式会社小学館


国鉄(当時)の路線を中心に、線路の平面形状(カーブ)と断面(勾配)の図を収録する、鉄道好きな人向けのシリーズ。しかし鉄道工学っぽさは素人でも理解できる程度に抑えてあり、車窓風景の描写も詳しいので、読み物として読むにもいい。

このシリーズのどのへんが自転車旅行と関係あるかというと、それはずばりすべての駅の標高が掲載されていること。その目的だけでもなかなか重宝する。

JR全線全駅

雑誌65952-32 / 1994年11月15日発行 / 1942円(税別)

発行所: 弘済出版社


表紙にはすべての路線、すべての駅、これ一冊でわかる駅の百科事典と書かれているが、まあその通りの内容を持っている。おそらく毎年出版されているのだろうと思うが、おれが持っているのはこの1994年版である。

路線別に歴史ガイド、車窓ガイド、運転ガイド、各駅ガイドが手際よく配置されている。路線は、最初が首都圏で最後の方に北海道……という順で並べられており、最初は戸惑ったが、何のことはない、時刻表と同様の並べ方なのだった。

さて、この本の内容のうち自転車旅行に関係するのは、各駅ガイドの(ちょっとめいにあっくな)情報である。無人駅で一日平均乗降人員が4人……というのを見れば、その駅が駅寝好適駅であることがすぐわかる。

新装版 日本百名峠

ISBN4-944194-01-3 / 1999年8月1日発行(初版第1刷) / 1800円(税別)

編者: 井出孫六 / 発行所: 株式会社メディアハウス / 発売所: 株式会社マリンアド

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これは、1982年に出たオリジナルを新装版として仕立て直したものである。

日本全国の100の峠を12名の執筆陣が歩いて書いた紀行文がまとめられている。それぞれの紀行文は、信州百峠などとはだいぶ異なり、案内文ではなく、それぞれが勝手気ままに書いた、まさに紀行文である。

峠は各都道府県から最低ひとつは選ばれている。そういう方針で選んだと序文に書いてあり、偶然そうなったのではないことがわかる。仮にも日本の百名峠である。それを選ぶときにそのような雑念というか、余計なサービスのようなものが必要だったのかどうか、疑問が残る。あるいは「日本百名峠」は執筆陣のあずかり知らぬところでついた書名だったのか。

それは抜きにしても、この本での峠の選択はかなり変な気がする。例えば北海道では石北峠が選ばれている。どうしてあんな地味な峠が、と思いつつ読んでみると、囚人により切り開かれた歴史が書いてあるのだが、それならむしろ北見峠を選ぶべきところだろう(石北峠は戦後に開かれた新しい峠で、そういういわくはないはず……と思う)。あるいはもっと有名なところで鉄道の常紋峠でもいいではないか。……こんなふうに、この本からは、良質なアドバイスを受けることなく書かれたという、どこか孤独で偏屈な雰囲気が伝わってくる。

峠の選択についてのケチはこのくらいにして、紀行文の感想を書いてみる。三国峠(群馬県)や権兵衛峠(長野県)のように、中には峠歩きの空気感があっていいものもある。しかし国見峠(岩手県)や岳滅鬼峠(大分県)のように、峠に到達できずに終わっているという、準備と余裕の不足をうかがわせるものもある。さらに、細尾峠(栃木県)や野麦峠(長野県)のように、ほとんど峠の由来しか書いていないものもある。あらすじしか書いていない読書感想文のようなものだが、その「あらすじ」はけっこう類型的な近代史の話だし(率直なところ内容は峠名だけで想像がつく)、現地踏査を重視していれば犯すはずのない間違いまで混じっていては(野麦峠からは松本盆地は見えない)、さすがに呆れる。

さらには、刈田峠(山形県)や六十里峠(福島県)のように、「峠を訪れる軽薄でバカな若者」と、その存在を可能にする現代文明への、薄暗い復讐意思のようなものが垣間見られる、読んでいて気分の悪くなる紀行文もある。まあ、貴重な他山の石ということだが。

細かいところだが、「だである調」が主体の中に、「ですます調」の文章の峠があるのは一体どういうことか。それくらい統一してもいいではないか。

フォーマットについて。各峠には平均して3ページが割り当てられている。地図はあるが小さく、単独では絶対に峠の位置を把握できないレベルだ。中山峠(宮崎県)のように地図が間違っているとしか思えないものもある。モノクロの写真がときどき入っているものの、ない峠も多い。撮影者は信州百峠と同じ三橋秀年氏だ。巻頭カラーページのようなものはない。

なお、巻末には「日本の峠1000」というおまけがあり、1000もの峠が挙げられ、ひとことふたことで峠が紹介されている。この選択にも問題がありそうに思える。

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2003年12月4日初版 / 2012年2月16日更新