津軽峠

いわゆる白神ラインの最も東側にある峠

読み方つがるとうげ
標高640m
位置青森県中津軽郡西目屋村・西津軽郡鰺ヶ沢町
道路青森県道28号線
水系岩木川・赤石川

実走日2011年7月23日(土)
地図などGoogle Maps地図院地図

青森県道28号線は、津軽平野の弘前から西に進んで日本海沿いの岩崎(深浦町)に出る道路で、白神ラインという愛称がついている。世界遺産である白神山地の北側を横断する道路ということで人気が高い。

が、自転車乗りの目から見ると(自転車乗りの共通見解でないことはお断りしておきたいが)、むしろ地図上の道筋の鮮烈さが走破の意欲をそそる道路である。南北に走る2本の川筋を東西に横切って進むため、短い距離に峠が3つもある。しかもロングダートで、沿線に人家はなく、エスケープルートも1つしかない。

白神山地が有名になる前から、この道路は過酷なロングダートの道として知られていたように記憶している。当時は弘西林道と呼ばれていた。手許にある1995年版の昭文社のツーリングマップにもその名前で出ている。

津軽峠はその3つの峠のうち最も弘前側(東側)にある峠である。残念ながら峠道としてはろくな評判を聞かないのは確かだ(ダートのくせに異常に交通量が多い、という類)。鞍部近くには有名な巨木があり、路線バスも通る。行くならば観光峠だと事前に割り切っておくことが肝要である。

津軽峠という峠の名前は、地方名ではなく、峠の西側の津軽沢(赤石川の支流)に基づいているのだと思われる。

林の中の上り

おれは東側の基地であるアクアグリーンビレッジANMONでキャンプをし、翌朝からこの峠を目指すことにした。前述のような評判を知っていたので、朝早く発つことにした。そうはいっても6時半少し前だが。

この地点の標高は230mあまり。だから上りは400m程度だ。東から来るとここまでは舗装だったのだが、ここからいきなりダートが始まる。走行注意!! この先42kmは砂利道ですという看板が建っている。

釣瓶落峠のダートもそうだったが、キャタピラで踏み固めた跡のようなでこぼこが路面にある箇所がある。砂利は深くはない。1キロごとに距離標が建っている。朝が早いだけあって通行はほぼない。

ブナ、ダケカンバ、サワグルミ、そしてホオノキの目立つ林を進んでいく。路傍には大きなフキが目立ち、北海道を思い出す。川沿いだが水面を間近に見るようなところはなく、あくまで林の中である。


尾太岳、駒ヶ岳などを眺める

途中で舗装が始まっておやおやと思うが、それはすぐ終わってしまった。どうやら急カーブの箇所だけ舗装しているということらしい。

ちなみに鞍部までに舗装区間は計4箇所あった。しかし全部足してもその長さは比率で5%以下だろう。

しばらく上ると左に南東側の眺めが大きく開けてくる。山また山の眺めだ。

この写真では、自転車のサドルの真上の最も高い山が尾太(おっぷ)岳で、その後ろに釣瓶落峠があるはずだ。また右側の奥には駒ヶ岳があたまだけ見えている。


鞍部

それを過ぎると鞍部である。鰺ヶ沢町津軽峠の標識のほか、大きな津軽峠の木の看板や弘南バスのバス停(!)もある。振り返ると後方に岩木山が見えることに気づく。

しかし……、鞍部にはサルが2頭いて、おちおち自転車を停めることもできない。こちらに気づいてもどく気配はなく、昨日の釣瓶落峠のクマのように手を叩いて音を出してみても同じである。しかたなく自転車を押してじりじりと近づくとヤツらは怖気づいたように藪の中に消える。ほっとするが、藪の中からはずっとがさごそと音がし続け、なかなか遠くへ行ってしまってはくれないようだ。


「マザーツリー」

鞍部の案内板によるとマザーツリー(ブナの巨木)へは270mとのこと。急ぐとはいえこれくらいは見ていこう。それで歩道を歩いていく。コンクリート舗装で勾配もなく歩きやすい。エゾアジサイの花がたくさん咲き美しい。

やがてその巨木にたどり着く。高さは30m、推定樹齢は400年というものだが、それほどすごいものとも感じない。何だかそこらにありそうな木にも思えてしまう。勉強不足だろうか。

ここから先も歩道は続いており、岩木山・尾太岳展望所と看板が出ている。行ってみると、少し行った突き当たりに尾太岳展望所が、その少し手前を左にそれたところに岩木山展望所がある。前者の眺めは鞍部の手前での眺めによく似ているが、下方にはしばらく前に上ってきたらしき路面が見える(鞍部の手前でも見えていたかもしれないが)。後者では名前通り岩木山がよく見える。非常な秀峰である。


鞍部から西側の眺め

さて自転車に戻り、鞍部の西側へ。そちら側には津軽峠駐車帯というものがあり、舗装された小さな駐車場のようなものとトイレがある。また展望案内板があり、正面には白神山地の中心部分が見えているらしい。なお赤とんぼがたくさん飛んでいた。

案内板によると、この写真では奥の尾根の右寄りの双耳峰が太夫峰、ハンドルの真上あたりの山が向白神(むかいしらかみ)岳、その左に白神岳と天狗岳(よくわからない)らしい。

それらの写真を撮りつつ、相変わらず後ろの藪ではがさごそという物音やキーキーいう鳴き声が聞こえ、気が気でない。同時にここでは人間の方が侵入者ということだな、と思う。

今回はテントを持ってきていて水も食料もあるので、白神ラインを脱出できずに途中で力尽きたらその辺で野営すればいいやと思っていたのだが、そんな気はとてもしなくなる。


天狗峠方面への眺め

下り始める。陽が射し始め、ジーッというセミの声がしてくる。あまり一気に下る感じではない。左手に眺めがやや開け、それはこれから谷下りをする赤石川の谷なのだろうが、その向こうの斜面にコンクリートの被覆が見える。次に行く天狗峠の道だろうか(あとで知るがその通りである)。

途中、1箇所だけまた急カーブで舗装の箇所がある(記憶があやしい。なかったかもしれない)。なお距離標はこちらにはない。重観光道路(造語)は終わったということだろうか。


摩須賀岳と櫛石山を奥赤石展望所から見る

道はまたじりじりと上り始め、やがて舗装になり、東屋があった。弘西林道完工記念碑なるものがあり、それによると1962年に初斧が入って1973年に完工したとある。何が目的で建設したのかは書いていない。

それを過ぎると道は下りになり、左に奥赤石展望所の案内看板があった。左に摩須賀岳と櫛石山が見えている。まあ、すごい展望ではないのに展望所が設けられているのは、ある意味、立ち入り手段の限られた地域らしい。


鰺ヶ沢へ下る道との分岐

それを過ぎると道はまたダートになり谷底に下りていく。やがて赤石川沿いに鰺ヶ沢へ下る道の分岐があり→鰺ヶ沢 くろくまの滝と標識が出ている。ダートにこの手の青くでかい標識が出ているのは何度見ても面白い。

谷底に近づくと道は舗装になり赤石川に出る。次の白神ラインの2番目の峠である天狗峠の峠道の開始だ。標高は250mあまり。

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2011年9月22日初版