大平峠

天嶮親不知を迂回する開放的な峠

読み方だいらとうげ
標高630m
位置新潟県糸魚川市
道路林道橋立上路線
水系外波川・青海川

実走日2011年10月10日(月)
地図などGoogle Maps地図院地図
同名峠大平峠(長野県)

富山県と新潟県の県境の海沿いには、親不知(おやしらず)という断崖絶壁がある。国道8号線も北陸道も鉄道の北陸本線もそこを通っているが、それを山側に迂回していく山道にあるのがこの大平峠である。

おれはトンネルばかりの国道8号線を通過するのはどうも気が進まなかったのでこの峠道を通ることにした。そのため、本来この峠を越えるならば糸魚川市の外波から直登するのが正式なのだろうが、それよりもずっと西側の富山・新潟県境から山腹をトラバースしながらこの峠を越えた。

おすすめ、と言いたいところだが、おれが行ったときには本当は通行止だった。

この峠名の読み方は現地で知ることはできなかった。しかし富山県側の集落に大平(だいら)というのがあるので、だいらとうげが正しいと思われる。しかしそうだとすると、外波から越えるのではなく、おれがやったように県境から山腹をトラバースしていくのが本来の峠の道筋ということになるな。

県道115号線の上り始め

国道8号線の富山県と新潟県の県境には川があり、その名も境橋という橋が架かっている。その手前で国道を右にそれ、県道115号線に入る。

すぐに大平峠15.3km山姥の里6.3kmの標識があり、これから行こうとしているのが大平峠という名前だと知れる。川を渡って新潟県に入る(標識の類はなかったが)。しばらくは2車線でゆっくり上る。追い風が強烈でとても走りやすいが、勾配を純粋に考えればかなりきつい部類ではないか。旧道を放棄して豪快に新道をつけている区間もあり、槻木峠を思い出す。


上路を過ぎて棚田の脇からコンクリートの被覆を見上げる

やがて上路(あげろ)の集落に到着。小さいがなかなか味のある集落である。山姥の里というのはここのことのようだ。道は狭くなる。突き当たりを右に曲がって進む。

やがて集落を抜け、薄暗い林の中で川を渡るところにこれから先は災害の為通り抜けできませんの看板が出ている。あまりにも立派な看板なので、単に通行止がデフォルト値だというだけのことに思え、突破を決定する。

林を抜けると、左手に棚田のある斜面が広がる。そして左前方の山腹にコンクリートの被覆が見える。あれに上るということだろうか……? 地図で確認すると、どうもそうらしい。

ものすごく小さいのだが、この写真の中央やや左に、そのコンクリートの被覆が写っている。


上路の棚田を見下ろす

めりめりと斜面を上り、折り返して林の縁を行く。さっきのコンクリートの被覆が近づいて見えてくる。

しばらく行くと右に舗装路の分岐があり、栂海新道ジオサイト・坂田峠 白鳥山登山口の看板がそちらに出ている。一方でこれから行く方にはパイロンが置かれ全面通行止の看板が出ている。まあ行くまで。

それを過ぎると、おそらく標高400m地点のあたりで、土石流が道路を破壊してしまっているのを見る。右から流下した土石が路面を覆い、左の路肩を崩して谷底に落ちている。タイヤを泥だらけにしながらそれをクリアする。自転車ならまあ楽勝だ。

いよいよ空が広くなり、道は明るくなってくる。やがてさっき見上げたコンクリートの被覆の箇所を通る。左手遠くにさっき通った棚田の中の道が見える。谷間の眺めは広いが海は見えない。


削られた石灰岩の山海を見つつ行く

なおも上りは続く。尻高山の北側に回りこんでいくとやがて海が見えてくる。木々に遮られて眺めはあまりいいとは言えないが、外波川の河口付近にある防波堤を見ることはできた。

沿道にはどす黒い枯れ葉をつけたホオノキや、枝先から紅葉の始まったカエデが目立つ。ドングリも見かける。この季節だというのにまだツクツクボウシが鳴いている。さすがに合唱とはいかないが。

道はいったんなだらかに下り、また上り出す。左手前方に白い崖の山がふたつ見える。右側の山の崖は自然のものだろうが、左側の山の崖は武甲山と同じように人工的に削られてできたものだ。石灰石の採掘のせいであることは(新潟県人だからか)知っている。そのふたつの山の間の向こうには市街地が見える。糸魚川の市街地だろう。


鞍部鞍部の石碑

やがて鞍部に到着。外波から上ってきた道が左から突き当たってきている。右には駐車場があり、左には大平峠の石碑とベンチなどがある。そして直進する向きにはまたしても災害の為通り抜けできませんが出ている。


深い谷を見下ろしつつ行く

下り始める。右手には深い谷が広がる。その深さには湯峠や御嶽の大平峠(おお、同じ名前だ。濁河峠参照)を思い出す。縁石はあるがスピードオーバーして突っ込めば確実に死ねる道路だ。慎重に下る。

しばらく行くと橋立金山跡地の看板がある。この谷底にはかつて(少なくとも明治まで)集落があり、坑夫が千人あまりも住んでいたという。今こうして眺めている分には少しも人気がないので、実感が湧かない話ではある。

林の中の区間などはほとんどない。ひたすら右に深い谷とその向こうの高い尾根を見つつ下る。やがて橋立の集落を通過する。ここには橋立ヒスイ峡の入口があるが、時間もないし、かなり下りそうでもあるからスルーする。


青海黒姫山の断崖デンカの工場の脇を行く

その辺からは、右手にはさっきも峠近辺から見た白い崖の山(青海黒姫山)が間近に迫る。白い崖は本当にすごい迫力だ。

やがて道は青海川の谷底に下りる。今度はデンカの工場が迫ってくる。古めかしくてほこりっぽくてでっかい、昭和の雰囲気のある工場だ。道路の上をガスパイプがまたいでおりCOガスパイプ注意 火気厳禁 前方150Mの看板が出ている。ガスの種類書かれると怖いんですけど……。

やがて青海駅の裏に突き当たる。ここはもう海岸といってよい。ここから糸魚川の市街地へは国道8号線を一切走らずに(横切ることは必要だが)行くことができる。

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2011年12月15日初版