神坂峠

県境を越える大スケールな峠

読み方みさかとうげ
標高1640m
位置長野県下伊那郡阿智村・岐阜県中津川市
水系天竜川・木曽川

実走日2002年4月29日(月)
地図などGoogle Maps地図院地図
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神坂峠は伊那谷と木曽谷をつなぐ最南の峠である。未整備で険しいながらも、明るく眺めのよい峠道の雰囲気は、鬼が城山椎矢峠にも通じるものがある。要するに大物峠である。それだけではなく、かつては東山道だったのだから歴史もある。

ちなみに、間違えやすいところだが、この峠は県境の峠ではあるが、国境の峠ではない。峠のどちら側も信濃国である。

峠道は全舗装。しかしおれが行った時点では阿智側は落石がひどく、自動車での通過は不可能と思われた(そもそもおれが行ったときは通行止だったのだが)。

園原側の渓流沿いの上り

はじめにお断りしておくと、おれは本来通行止のところを、工事現場の人に無理を言って通してもらった。決して誉められたことではない。確か工事期間は2002年の8月20日頃までだったと思う。

さてこの写真は工事現場(園原側の上り口から2kmくらいの地点)を過ぎて峠を目指すの図。舗装はされているが落石が多く、しかも多くは活動性である。鋭い音を立てて礫が転げ落ちてくるのはけっこう怖い。通行止だから、下手に命中すると白骨化するまで発見されないだろうということもあり。

しばらくは単調な渓流沿いの上りが続く。勾配は普通くらいだ。1箇所だけ短いがトンネルがある。


園原側の鞍部近くの上り

しばらく行くと正面に1段上のガードレールが見えてくる。ヘアピン連発の上りの始まりである。ここからは、上れば上るほど、さっき走った眼下の道と同時にこれから走る頭上の道が次々に現れてくる感じがする。うーむ。いい峠だなあ。

だんだんと、道の雰囲気は荒廃というよりはどこか浮世離れした雰囲気になってくる。斜面はクマザサに覆われ、急峻な中にどこか高原風の空気が漂い、新緑のカラマツが目に鮮やか。斜面の向こうには圧倒的にでかい恵那山がそびえる。


最高所付近

地図をよく読むとわかるが、峠本体の鞍部を越えるより前にも別の鞍部を越える。スキー場の工事現場からの道が右から合流し、こちらの道も左に曲がる。

さっきまでの深い山という感じの峠道から一変し、さえぎるもののない眼下に天竜川流域の広々した爽快な眺めが広がる。勾配も緩くなり、尾根筋を行くスカイラインのようだ。

写真のあたりが1640mの最高所。展望案内板もあるのだが、この日は春の晴れ霞で南アルプスは判然としなかった。


神坂峠頂上

ゆったりと下り、左カーブを曲がると浅い切通しの峠に到着。標高は1569m。ここからは神坂峠遺跡は歩いてすぐだし、眺望絶佳という富士見台までは歩いて40分ほどらしい。おれは行かなかったが。

神坂峠から富士見台へと連なる稜線は、高木があまりなくクマザサに覆われているので、何となく美ヶ原とか美幌峠とか狩勝峠とかを思い出す。

この日はこの頂上部に誘導員のような人が3人ほどいた。何でも、山開きということで中津川側の麓からシャトルバスが走ってハイカーを輸送している……とのこと。実際、見ているとわりと頻繁にマイクロバスが隘路を上ってきた。


神坂峠頂上からの中津川側への展望

で、写真は頂上から中津川側を眺めたもの。これから下る道がぐにゃぐにゃと斜面を折り返しているのが見える。ちなみに左の方には駐車場も写っており、マイカーで来た人はそこでシャトルバスに乗り換えてここまで上ってくるわけだ。この辺は頂上が車でいっぱいだった大弛峠などよりよくできている。

谷の向こうには畑地が取りとめなく広がっているのが見える。書籍信州百峠によると、その向こうに御獄が見えるらしいが、峠地点の路面からという意味では多分嘘だろう。富士見台からならよく見えると思う。


中津川側の下り

中津川へはそのぐにゃぐにゃの道を下る。マイクロバスが上ってくるので激走はできない。

いかにも急峻そうなのだが、実際走ってみるとそうでもないことに気づく。阿智側と違い路面に落石もない。落石が片付けられているのではなく、もともと落石しないように見える。

広々とした風景を見つつのワインディングが終わると、道はやがてうっそうとした針葉樹林の中を走るようになった。木と木の間に木しか見えない、本当に深い森の中のガードレールもない単調なワインディングである。それを過ぎると目がやられそうなくらいにのどかな山村の風景になる。

とにかく中津川側は阿智側と比べてやたらに峠道が長い。阿智側から上った方が楽は楽だろう。

中津川の市街地まで下りると、標高は300m程度になる。なお、阿智側の標高は、昼神温泉が600m弱といったところ。

この峠については、2004年の暮れにLmonchiさんから情報提供をいただいた。謝して以下にまとめを掲載させていただく。

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2002年5月8日初版 / 2010年4月7日更新