岩井堂峠

豪快かつ重厚な林道峠

読み方いわいどうとうげ
標高1130m
位置長野県長野市
道路林道岩井堂峠線
水系信濃川

実走日2006年9月2日(土)
地図などGoogle Maps地図院地図
関連書籍信州百峠

ともに犀川の大支流である裾花川と土尻川を隔てる虫倉山系の尾根には、上流側から順に大洞峠、岩井堂峠、地蔵峠と峠が連なっている(名前のついていない峠道を入れるともっとある)。岩井堂峠はその中にあって、唯一の林道であり、自動車道の開削も新しい(1983年。書籍信州百峠による)。

特に優れた北アルプスの眺めや素朴な山村の眺めがあるわけではないと書けば、大洞峠などよりも面白くなさそうであるが、しかし実際に訪ねてみるとこれでなかなか重厚な雰囲気のある峠である。

ところで大事なところだけれども、この峠はおれが行った頃はしばらく全面通行止だったらしい。その後どうなったかはわからないが。

月夜棚

おれは南側の土尻川筋からこの峠を上った。土尻川側の中腹の標高800m付近には、県道401号線という、おれの大好きな田舎道がある。峠道はこの県道401号線まで上ってからスタートするとも言えるけれども、やはり峠越えの様式的には土尻川の谷底からスタートするのがよかろう、ということで、中条(当時の上水内郡中条村の中心市街地)から村道中条姥久保線での登坂を開始した。

いきなりものすごい急坂でめりめりと高度を稼ぎ、左手眼下に中条を見下ろす。月夜棚という風流な名前の集落がある。西の方には北アルプスが望める。槍ヶ岳の鋭い峰が少し頭を出している。


県道401号線に取り付いたところ

途中で勾配は緩くなるが間断なく上りは続く。尾根筋を通って行くような箇所もある。ミンミンゼミの声が多い。再びきつい上りをクリアして、県道401号線に突き当たる。中条の標高が440mでここが760m。ここへ来るのは3年ぶりだが、記憶通りの田舎道で思わずニコッとする。

右折して県道401号線に入り、少し上ってカーッと下る。おっと! 左に林道岩井堂峠線の標識。左折だ。通行止という掲示も出ているがいつものように無視。1.5車線のまずまずきれいな舗装路だ。けっこうきつい坂が林の中に続く。パイロンで作ったゲートがあるが突破。


岩井堂観音北アルプス方面の眺め

しばらく行くと左手に岩井堂観音の入口がある。自転車を停めて1分か2分かそこら上ると岩井堂観音。巨岩に押し潰されそうな位置に建物がある。江戸時代の創建らしい。建物の脇には水場がある。

深いスギ林の中の登坂が続く。通行止だから当然だがとても静かである。

途中で北アルプスがちらりと見えたりするが、眺望は基本的にない。まあ何というか、隣の大洞峠と比べるとはるかに険しい感じの峠である。ある意味峠道としての風格はかえってある。


カラマツ林鞍部

さらに進んで標高1000m付近に、信州岩井堂の名水という石碑が置かれ、水が流れ出している。さっきの水場から引いているわけではなさそうだ。冷たくてうまい。

やがて道路はカラマツ林に覆われる。セミの声もほとんどしなくなる。細いカラマツの幹と幹の間にまたカラマツの幹が見え、細い枝と細い葉がびっしりと空間を埋め尽くしているさまは、まるで細密画を見ているようだ。

さて鞍部に到着。あまり眺めはよくないが正面に戸隠連峰が見える。下り始めると右手にちらちらと戸隠と山村の眺めがある。展望所を作ればさぞ眺めがよかろうが、そのようなものはない。


親沢

舗装は真新しいが、通行がない北麓だからか、中央にコケが生えている。落石もあり、落車もパンクも怖いからゆっくり下る。再びパイロンを並べたゲートのようなものがある。

親沢(おやざわ)の集落に差し掛かると一気に路面は悪くなる。一部には完全に舗装がいかれてしまいダートさながらになっているところもある。それ以外でもコケどころか草が道路の中央に生えていたりする。裾花川側は親沢までは早いうちに舗装されて、その後まともに改修していないのだろう。

やがて裾花川にぶつかり峠道は終わる。標高は650m。突き当たりを左に行けば鬼無里・白馬方面、右に行けば長野方面ということだろう。おれは左折した。

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2006年9月15日初版 / 2010年1月14日更新