日諸峠

誰も通らない県道峠

読み方ひもろとうげ
標高850m
位置宮崎県東臼杵郡諸塚村・西臼杵郡日之影町
道路宮崎県道50号線(諸塚側)
水系耳川・五ヶ瀬川

実走日2012年3月28日(水)
地図などGoogle Maps地図院地図

日諸峠は諸塚村と日之影町を結ぶ道にある峠である。しかし名前に反してその両者の間のメインルートではないようだ。後述の通り、メインルートはこの峠の東隣にある桂峠という峠のようである。

地図を見る限りいかにもローカルな立地であるが、実際にはその想像のはるか上を行くローカルな峠で、通行は少なく、整備もされていない。特に諸塚側は主要地方道であるにもかかわらずだ。

地味な峠ではあるが、なかなか険しいし、眺めもいい箇所があるので、楽をしたいのでない限りはおすすめできる。

柳原川沿いに上る

おれは諸塚側からこの峠を越えることにした。国道327号線を離れると最初から諸塚の市街地の中をじりじりと上り始める。国道から分かれるあたりの標高は140mほど。

県道50号線は最初は2車線あるが、少し上って諸塚中学校を過ぎると1.5車線になる。地図を見る限りもっと上流まで整備済みでもおかしくないように見えたが、そんなことはなかったようだ。

柳原川の沢沿いの森の中の上りが続く。集落はない。沢は曲がりくねっていて、行く手や来た道を望むことはほとんどできない。勾配は緩い。山にはぽつぽつ桜が咲いている。路傍にはミツバツツジやアセビを見る。


上長川

堰堤程度の落差の柳原ダムを過ぎ、うねうねと緩く上って諸塚ダムへ。これも大きなダムではなくダム湖も小さい。このあたりまで来ると人気はなくとても静かである。

やがて上長川(かみなごう)の集落に到着。石垣を積み上げた段々畑が目立つ集落だ。交差点があり、標識と看板に書かれていることをまとめると

である。

高千穂へ行くわけではないが左折して進む。そこから先でも石垣を積んだ耕地をよく見かける。石垣には熊本城のような見事な曲線を描いて立っているものまである。


尾根と1段上の道を見上げる

諸塚神社がある立岩の集落はやや大きめだ。ここでは道をいっぱいにふさいで木の枝の切断などの道路保守作業をしている車に出会う。尾股峠を思い出す。ほとんど誰も通らないからできることだろう。

最後の内の口の集落を過ぎたところで初めて正面に大きな尾根を見る。いかにも高い感じだが、これは日諸峠よりも北西側の諸塚山方面の尾根だ。

さらに進むとこれから折り返して上る1段上の道が見えてくる。この付近からは路面には先の尖った落石や木の枝が多く落ちているようになる。県道の標識がなければ道を間違えたかと不安になるところだ。また勾配もきつくなってくる。

この写真では、自転車の真上よりやや右側の山腹に白いガードレールが見えている。


折り返してからの道諸塚側の眺め

折り返しをクリアすると、正面に1段上の道の、そして右手に鞍部近くのガードレールがそれぞれ見えてくる。じりじりと上り続ける。通行はまったくない。眺めはよくなってくるが、見えるのは山ばかりで集落やこれまで登ってきた道筋などの眺めはあまりない。

背後にはやや遠めの尾根も見えたが、今調べると諸塚・椎葉村境の黒岳あたりの尾根で、それほど遠くはない。

あたりはスギ林が主体だが、木の花としてはヤブツバキ、キブシ、少ないがミツバツツジ、そして草の花ではフキノトウなどを見る。


鞍部

やがて鞍部に到着。尾根道である六峰(ろっぽう)街道への突き当たりになっている。それにしても立岩あたりからここまで他の通行者にはまったく会わなかった。

鞍部には看板がいっぱいある。そのうち日之影町の案内板と道標には日諸峠の文字がある。


鞍部直下から日之影側への眺め

さて下るとする。左折して六峰街道を少し行くと、日之影に下りる道が右に分かれるのでそちらに入る。その付近からの眺めは素晴らしい。折り返して下っていく道筋、皆伐跡地、そして遠くの山と集落。昨日ぼんさん越の椎葉側で見た風景に似ている。

この写真で最も奥にやや霞んで移っている山は延岡市の大崩山で、これまたあまり遠くはない。


日之影側に下る道

その眺めを味わいつつ下る。路面には相変わらず落石は多いし、ガードレールもないところが多いからあくまで慎重にである。


追川沿いの集落

その素晴らしい眺めの道は比較的すぐ終わり、あとは追川の谷底の林の中の下りとなる。それでも勾配はそこそこ急なままである。集落がぽつぽつあるが先ほどと同じように石垣が目立つ。

気がつくと道路は県道209号線になっている。それはさっき上長川で分かれた桂峠の道だったんじゃないのか。地図を見ると県道50号線も県道209号線も諸塚村境に左横ずれ断層があるかのように道筋がずれているのだった。なぜだろうか。

やがて道は五ヶ瀬川に突き当たるが、ここはもう日之影町の中心街にほど近い。かつての駅には温泉や列車の宿があるし、買物もでき、見事なアーチ橋(青雲橋)を麓から見上げたりもできるので、立ち寄る価値のある町だと思う。深い山の深い谷にある町という印象があるが、日之影温泉駅の標高は102.7mしかない。

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2012年11月29日初版