粥新田峠

変化のある山里の峠

読み方かゆにたとうげ
標高550m
位置埼玉県秩父郡皆野町・東秩父村
道路林道大霧山線(皆野町側)・県道361号線(東秩父村側の麓)
水系荒川

実走日2012年11月4日(日)
地図などGoogle Maps地図院地図
関連書籍秩父の峠

粥新田峠はいわゆる外秩父山地を越える峠で、同じ並びに、北には二本木峠が、南には定峰峠がある。標高もそれらと似通っている。

西側から尾根にかけて秩父高原牧場があって、その脇を進む区間があり、そこにはダートもあるので、道の雰囲気には変化がある。また東側でまっすぐ谷沿いに下りようとすると遊歩道を走破することになり、これもまた面白い。

ところで、同じ尾根筋にある峠の中では、今では定峰峠がメインルートになっているわけだが、書籍秩父の峠の記述によれば、江戸時代は粥新田峠こそが川越や江戸と秩父を結ぶ幹線道路だったとのこと。荒川沿いの街道がない時代のことだから、その地位は現在の定峰峠の比ではなかったことだろう。

峠名について。実際に峠にある看板の類には、田峠と書いてある。しかし皆野町側の麓で見たのは粥新田峠だし、国土地理院の地形図や書籍秩父の峠でもそうだから、そちらにそろえておく。

峠名の読み方について。後述の榛名神社にある看板ではにたとルビが振ってある。実際発音するとそうなる気もするし、書籍秩父の峠にも地元の人たちは、この峠をカイニタ峠と呼び、カユニタと発音することは少ないと書いてある(その割には、この本では見出しにはかゆにたとルビを振っている)。迷ったが、現地ではかゆにたとなっている看板が多いことに鑑み、そちらをとった。ちなみに秩父の峠には、カユやニタは結局何なのかという考察、そして関連する伝説が長々と書かれていて面白い。

皆野町側の入口分岐の看板

この峠の皆野町側の入口は県道82号線沿いにある。おれは南から来たが、粥新田峠の標柱や大きな関東ふれあいの道の看板があったから、見落とす心配はなかった。他には林道大霧山線のぴかぴかな標識や、丸ポストなども目立った。なお標高は200mくらい。

少し行くと道はY字に分かれ、看板があり、右が山道 車行止り、左が高原牧場〜東秩父に至るとなっている。右の方がはるかに立派な道だし、左の方が山道に見えるので、ええーっと思うけれども、まあわざわざこういう看板を出しているのだからその通りなのだろう。それで左の道に入る。


皆野町側の集落(峯)の中を行く

道はしょっぱなから畑のあるまばらな集落の中を折り返して上っていく。三沢川(県道82号線沿いの川)の対岸の山腹の眺めがよく、さっき曽根坂峠から下ってきたときにそばを通ったごみ集積所のごみ箱がこちらからも見える。また道路沿いには紅葉の始まりかけた桜の木がぽつぽつある。桜の時期にはなかなか美しいかもしれない。

またこの付近には道端に湧水が引いてあり峯沢の涌き水です。ご自由に利用下さい。自然水!!と掲示が出ている。何だかほろりとする。口に含むとそれほどひんやりとはしていない。この季節だからか。


秩父高原牧場の入口

集落は終わり、林の中を折り返して上る。路面にはコンクリート舗装も交じる。しばらく苦闘するとやがて目の前がやや開け、秩父高原牧場が始まった。手書き風味満点の牧場関係者以外大型車輛通行禁止などの看板がある。

なおこの地点には榛名神社があり、皆野町観光協会による由緒の説明の看板がある。

この看板ではにたとルビが振ってあるというのは冒頭で書いた通り。


武甲山や秩父市街を眺める

ここからは林の中ではないがまだ牧場の中という感じでもない。陽が当たり、ススキが多く、御霊櫃峠に雰囲気が似ていると感じる。じりじり上っていくと左後方彼方に雪をかぶった山脈がうっすら見えているのに気づく。左から白根山、横手山、岩菅山といったあたりだったようだ。

それを過ぎると突然正面が開け、牧草地の向こうに武甲山や秩父市街の眺めが開けた。なかなか変化のある峠だなあ。


牧草地の脇を行く

それを過ぎると少し下り、今度はダートである。走りやすいダートだ。眺めがいいとか牧草地の中とかいうことであれば興奮したのだろうが、林の中だった。ダートの区間はおそらくは1km未満か。

その後は折り返しながら牧草地の脇を上る。開けた感じの区間が多くなる。


鞍部

やがて林の中で550mの最高所を越えて道は下りに転じ、鞍部に到着する。看板がたくさんあるからそれと知れるが、そうでなければ通過してしまいそうな鞍部だ。なお鞍部の標高は540m。

徒歩道が車道を横切っているので道標や案内板がある。東屋もある。また粥仁田地蔵尊というものもある。なおこれは秩父事件の映画を作る際に発生した不使用フィルムを供養するとかで建てたものだと書いてあり、古いものではないことがわかる(新しいものであることは見ればわかるが)。

ところで書いていなかったが、ここまで峠道には通行者はほとんどなかったが、この鞍部にはハイカーがけっこういた。


徒歩道を下る

さてここから道なりに下ると山腹を右にトラバースしていってしまい、南の朝日根の集落に下りていってしまうことになる。それはそれでいいけれども、今回は峠付近に源頭部を持つ谷川沿いにまっすぐ東に下りてみることにした。

鞍部から少し下ると、稜線沿いに秩父高原牧場へ行く道を左に分ける。そこからまた少し下ると、右カーブから左にそれる道があるのでそれに突入する。地形図だと車道に見えるが、実態は遊歩道だ。しかし登山道などよりもはるかに走りやすい。もっとも、こちら側から上るのはちょっとやりたくない感じだ。スギの林の中で見通しはきかない。

少し行くと人家があり道路も舗装になるが、コンクリート舗装だしかなり狭い。人家の裏庭を走っているような感じである。やがて栗和田で秩父高原牧場から下りてきた立派な県道361号線にぶつかり、右折して一気に下る。槻川沿いの県道11号線に突き当たると標高は190mほど。

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2013年5月16日初版