大道峠

遠くに山並みを見る穏やかな峠

読み方だいどうとうげ
標高780m ※鞍部の標高です。
位置群馬県利根郡みなかみ町・吾妻郡中之条町
道路群馬県道53号線
水系利根川

実走日2010年4月25日(日)
地図などGoogle Maps地図院地図

大道峠は、群馬県北部の赤谷川沿いの三国街道から、同西部の吾妻川筋にある中之条に抜ける県道にある峠である。連絡路としてはある程度利用価値がありそうに思えるが、交通量は多くない。

何となく豪快そうな印象を受ける名前であるが、実際には道路の様子も周囲の雰囲気も山岳の展望もすべて穏やかなものだ。急いで通り抜けるのではなく、のんびりと走るのに向いているように思える。

須川宿の西側で見る仙ノ倉岳など

この峠を北側から越えるとすると、県道53号線が国道17号線から分かれるあたりの須川宿が峠道の開始ということになろうか。下流側の月夜野からここまで来るルートとしては、国道17号線(意外と走りにくくはない)や国道の南側の広域農道(豪快)が代表的だろうが、おれは今回は国道の北側の集落道を使ってみた。

この集落道はのどかなのはいいがとてもトレースが難しく、大縮尺の地図を持っていたにもかかわらず、携帯電話のGPSの助けを借りて(便利な世の中になったものだねえ)、ようやく須川宿へ。途中、国道17号線を跨ぎ越す燦々橋という橋からは、右手に白く輝く仙ノ倉岳が見えた。

須川宿は有名な観光地なのかどうか知らないが、なかなかの人出だ。左折して大道峠を目指す。畑が広がり、右手にはさっきも見た仙ノ倉岳(写真左)や小出俣山(同右)が見える。


遊神館を過ぎたあたりの風景遊神館を過ぎたあたりから武尊山を見る

さて県道53号線に合流して峠道のスタートである。この道は須川宿に寄らずにその南側を抜けており、実は須川宿そのものを通過する必要はなかったわけだ。

道幅は2車線程度。勾配は緩い。最初は背後に雪の仙ノ倉岳あたりを見つつ行くが、やがてその眺めはなくなる。谷の中を行くがその谷は狭くはなく、ぽつぽつ集落もある。しばらく行くと右側に遊神館という温泉施設がある。反対から上れば下りにこれに入れたわけだが。

ちょうどそこで道は折り返して上り始める。代掻きが終わって水を湛えた田んぼがあり、武尊山が見える。背後の山村と冬枯れの終わり始めたこんもりとした山の眺めもいい。


上りながら南側の山々を見る

いったん雪の山の眺めは去って、斜面を折り返して上り続ける。しかし勾配は全然きつくない。途中から道はやや狭くなり、スギやヒノキの林の中の区間も一部に出てくる。

しばらく行くと明るい枯木林の中の道となる。背後の樹間にちらちらと武尊山の姿が見える。しかしなかなか展望は広がらない。もどかしい気分で上り続ける。いつのまにか道はまた広くなっている。


鞍部手前からの眺望

やがて右手に大展望の開けるスポットがあった。後方の武尊山、正面あたりの谷川岳、そして左手の仙ノ倉岳。その嶺のいずれもが白く輝いている。そして正面下方にはさっき通ってきた集落の赤いトタン屋根が見える。


鞍部

そこからはほんの少しで鞍部だった。結局勾配の緩い楽な峠ではあった。まあ、須川宿の標高が540mくらいあったのだから、当然かもしれない。

鞍部には人家があり、これもまたあまり峠という感じはしない。

ここから先は、山腹を早めに下りてしまい中之条の市街地に短絡する道がいくつも県道53号線から分かれるが、おれは道なりに県道53号線を行くことにする。道沿いにいくつか見たいものがあるからだ。


榛名

下りも明るく開けた雰囲気は同じだが逆光だ。その向こうの榛名のギザギザした山並みを見つつ進む。あまりというかほとんど下りはない。途中で標高は790mに達し、これは鞍部よりも高い。

しばらく行くと→旧冨澤家住宅の看板が出ていた。これが見たいものその1だ。入って急坂を上るとそれはあった。真新しい茅葺きの屋根の大きな農家の建物だ。背後の黄緑の竹やぶと青空も美しい。靴を脱いで上がることもできる。しんとした、明るいような薄暗いような板敷きの床が広がる。


囀石

そこからも道は全然下らない。むしろ上りが多いくらいだ。ウグイスの声を聞きつつ走り、囀石(しゃべりいし)の集落に到着。日本一大モミの木の標柱が出ている。見たいものその2がこれだ。右にそれて畑の中を上っていくとすぐにその木に到着した。確かにとても大きな木である。枝張りを見上げると、その隙間から日光がこぼれる。静かな春の正午だ。

さてそのあとは下る区間が増えるがアップダウンもある。沿道の桜はほぼ満開である。しばらく道なりに行くと右側に伊参(いさま)スタジオ公園というのがあった。桜が咲く中に古い木造校舎が建っている。映画の撮影に使われたとのことだ。

そこからいくらか下ると道の駅霊山たけやま。これまでの静かな峠の行路が嘘のようにものすごい人出である。それを過ぎると道は急に下るようになる。

やがて中之条の市街地で国道353号線にぶつかり、峠道は終わる。中之条駅の標高は335.2mである。

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2010年6月3日初版