見返峠

この大山の見返峠という峠は現地では峠名はまったく顧みられていない気がする（うまいこと言ったつもり）。おそらくは蒜山大山スカイラインとか鬼女台（きめんだい）とかの名前を出さないと、たいていの人にはどこだかわかってもらえないと思われる。

とにかく、この見返峠は、大山の南東側の尾根を越える峠であり、かつての有料道路である蒜山大山スカイラインの上にある。途中にある鬼女台からは、蒜山高原と大山の眺めがそれぞれ素晴らしい。観光峠なので、自転車で行くならシーズンを外した方が快適だろう。

蒜山高原にはサイクリングロードが整備されている。おれはそれを反時計回りに走り、この峠の蒜山高原側の麓にある休暇村に東からやってきた。広い牧草地があり、観覧車なども見える。意外と観光地なのだなと思う。まるで清里のようだ。もっともこちらの方が全体的にはるかに広大だが。

さて見返峠の登坂開始である。標高は540mほど。最初は白い崖の目立つ大山と尖った烏ヶ山が見える。天気がいいのでよーし大山、待っておれ！と気分もハイになる。

眺望のない明るい林が続く。雰囲気は武石峠や越水ヶ原峠に似ている。尾根筋を行く道筋なので、それを考えれば前者に近いか。もっとも勾配はそこまできついわけではない。

始まりかけた紅葉がきれいだ。地面にはドングリやシバグリが落ちている。ヤマボウシの実がなっているのも見る。

やがてだいぶ空が広くなり、左手の眺めが広がる。蒜山高原方面の眺めだ。その次の右カーブをクリアすると、今度は正面に大山が現れる。そんなに近いわけではないのだが、それでも白い崖の迫力はすごい。

そこから少し行くと鬼女台展望休憩所の入口がある。見事な時計回りの渦巻きで駐車場に上がる。ここからは大山の眺めも蒜山高原方面の眺めもともに素晴らしい。売店もあり、ここだけは観光客も多い。

鬼女台から北西側を眺めると、大迫力の白い断崖の大山、そしてその右の三角形の烏ヶ山（からすがせん）がよく見える。昔山陰を旅したときに見た大山はもっと富士山型だったような覚えがあるけどなあ……と思ったのだが、あとで知ったところによると、西側からは富士山型に見えるのだ。

一方で南東側には蒜山高原の眺めがある。向こうに見える山並みは津具山や星山のような1000m級の山のようだ。

こちらの眺めも十分にいいと思うのだが、たくさん来ている観光客が全員、蒜山高原には目もくれず大山ばかり見ていたのは傍で見ていてちょっとおかしかった。

迫力迫力と書いているので、少しは迫力のある大山の写真も載せておこうと思う。左が大山で右が烏ヶ山だ。白い崖の光景は荒涼そのものだ。

大山の手前に低い尾根が見えるが、その向こうに鍵掛峠がある。うーむ、そこから眺めたらどれだけの迫力なのだろうか、と期待は膨らむ。

……が、その期待はすぐにしぼむ。この鬼女台の駐車場の脇にある案内板に、鍵掛峠の南側の道は通行止である、と書かれているのに気づいたからだ。こういう道路が通行止というのは本当に破壊されているか工事中かのどちらかだろうから、あきらめざるを得ない。

さて出発する。とりあえず鏡ヶ成（かがみがなる）までは上ることにする。まだ上りは続く。右側の眺めはなくなる。しばらく行くと県境の標識がある。ここが見返峠ということか。

どうでもいいが、江府町（鳥取県日野郡）のカントリーサインのキャラは、何かゲーム&ウォッチに出てきそうなデザインだな……。

そこからも下りもあるが基本的には上りである。やがて鏡ヶ成に到着。右側に大きな建物があり、これも休暇村だ。とても静かなところである。標高は930m程度に達する。

あとで知ったことだが、鏡ヶ成の東側にある擬宝珠山という山からは、蒜山大山スカイラインの道筋がよく見える。蒜山高原から尾根近くを縫い、鬼女台にらせんで上り、そして鏡ヶ成に向かってくるまでがちらちらと確認できる。道の復習におすすめである。鏡ヶ成から登って下りて計50分というハイキングコースになっている。

さてそこからはどうするか考えたが、広域農道経由で内海乢の直下の下蚊屋（さがりかや）へ下りることにする。それで左折して県道45号線を行く。広い2車線の下りだ。右手に烏ヶ山がよく見え、東屋もある。

少し行くと県道を右に分けて広域農道に入る。少し行くと県道から分かれて広域農道に入る。多少道は狭くなるが畑の中のストレートの下りが続き、ついつい55km/h程度までスピードを出してしまう。怖いよ怖いよ……とも思い、怖いんだったらそんなに出すなよ！ とも同時進行で思う。

急カーブで折り返して一気に谷間に下り、下蚊屋に到着。標高は520mほど。